生んだの落としたの


引き金に指をかけた
銃声が冷徹且つ従順なる咆哮を上げた

真っ青な顔で空が立っていて
犬は吼え、足元で蚯蚓が張っていた
鳥の最期の一鳴きは生憎と聴こえず
相変わらず空が真っ青な顔して立っている

ぼろりぼろりと破れていく
それがなんだったのか解ってしまった
忘れてしまった

ふと気づけば、ダモクレスの剣が頭上にあった
神は無表情だった

あなたがそうしたのではあるまいか!
あなたがそうさせたのではあるまいか!(私は業など背負うつもりもなかった!)


蜘蛛が小さい小さい黒い眼で私を見据える
君の足は八本で
てらてらと光る警戒色はまさに毒だ
途切れそうな透明の糸が
私を深淵へ追い込む

賽は投げられたとかつての英雄は謂う
鳥は真実最期の時に物哀しげに鳴いていた

神よ
再度問おう

あなたがそうしたのではないのか!
あなたがそうさせたのではないのか!

冤罪である
冤罪に他ならぬ!
この身に罪も業もあるものか!
――唯一無垢なる生命が只管に熱くどくりどくりと流れているだけであろう

神よ
あなたが肯定せずとも
拒絶に満ちた瞳を私にくれようとも(例え、彼の沈黙が咎めであろうとも!)

私はこの大地に脈動し続ける
深淵から黒煙の如し手が伸びる
蜘蛛の眼が私を見据える

真っ青な顔で空が立っていた
犬が吼え、足元で蚯蚓が這っていた


―――神は無表情だった


私は銃口を彼に向けた
引き金に指をかける


三日月の口で青黒い夜が嗤った












title:リネン
poem:ヨカ











古典?ラテン語格言が格好良かったのでそれをネタにさせて頂きました。
曲解しているので好きな人が見たら怒られそうなのですが…っ(汗)
神は果たして人間を生んだのかそれとも落としてしまっただけなのか、というようなことを受け取って頂ければ幸いです!
(ヨカ)