「カイン、待った〜?」
「待った」
「あらら…こういうときは、ううん今来たとこ、って言わない?」
「俺は2時間前にはここに来た」
「セシルのこと考えながら待ってたら時間があっと言う間だった〜、って言わない?」
「人を散々待たせといて何を…」
「一人で静かに本を読んでるカインも良いなぁって、向こうから見てたらつい時間が経っちゃって」
「はぁ!? いつから近くにいたんだ」
「待ち合わせの10分前から」
「おまえはバカか! 気配まで消して2時間も何やってんだ」
「いや〜カインもなかなか気付いてくれないから、半分意地になってたけどついに気付いてくれなかったね…」
「………貴重な休日をこんなことで割かせやがって…」
「だってー」
「この無為な2時間。おまえは俺の寿命を2時間も奪ったことと同じらしいぞ」
「何それ。その本の請け売り?」
「かなり言い得て妙だと思うぞ」
「…カイン」
「なんだよ」
「…………」
「………おい」
「そろそろ終わりにしないか?」
「何が」
「ぼくときみの片想い同士の時間を、さ」
「………」
「……カイン?」
「…お ま え は、馬鹿だ!!」
「イタッ! 何で殴るの!?」
「っていうか、おまえさっきからテレビの請け売りだろ! 遅刻した理由はテレビか!」
「だってCMのカップルのやりとり観てて、これがカインとのやりとりだったら素敵だなぁと思ってたらついさ〜」
「腹立つ上に気持ち悪いわ!」
「でも2時間も待ってたなんてカイン凄いよね」
「……」
「どんだけ僕に愛があるのって感じだよね」
「………」
「あっカイン!?」


 沈黙と共に静止し二秒。ついにセシルの顔を見もせず、カインは不意に高く飛翔しその場から去ってしまった。
 セシルが慌てて追って走り出す。
 カインの挙動、それが図星を突かれた照れ隠しなのか心の底からこの場から逃げ出したいと思った故なのかは、知る由もない。




 end.



05.どれだけ待ったと思っているの?