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 深く眠りにつくことを夢にみた白昼夢のような夢を観たい。








  + 夢 +








 見覚えのない懐かしい景色の中でが溜まってゆく。
 空を仰げば涙の天。

「決して手を離さないで」

 誰だっけ。
 誰だっけ。

       誰だっけ。




 雲よりいカモメを角切りに
 そしてこのに敷き詰めれば
 このをどこまで追い詰めてやれるだろう。





「手を離さないで」
「邪魔」
「オマエなんか死ね」
「帰れよ、どこかに」


 誰だっけ。
 誰だっけ。




 少しずつ苦しみを覚えていった瞳
 それが淀むのではなく
 その瞳に写る世界がどこまでもにまみれているようで
 そう言い訳するようになってからこの瞳は淀んでいった


「誰?君は」
「何?君は」



 誰だっけ。
 何だっけ。
 俺は。



       オレは?






「好きだよ」
「スキ だよ」
「嫌い」
「好き」
「嫌い」
「すき」
「愛してる」




 嘘吐けよ
 比率が違うだろ、比率が。
 なんでスキって言われたのばっか覚えてんの?
 嬉しかったの? 可愛いね。








 の菖蒲にのかすみ草を
 ぱらぱら降りかければ
 そのアヤメをどこまで痛めつけることができるだろう。
 どこまでそのカスミソウを傷つけることができるだろう。


 傷つけろ。
 誰も癒されるな。
 誰も苦しむな。



 みんなで空気になろうぜ、ここは。うん。






 この薫風だか爽風だかに吹かれて飛ばされよう。
 嗅いだことも無いの匂いに焦がれて酔いしれれば
 何か間違えばキモチよくて達せるかもしれねぇよ。


 永遠という甘い言葉にいて
 いて
 約束して
 誓って
 幸せだと呟いて

 果ててしまおう。




「浅月香介」
「浅月」
「浅月君」
「浅月」
「香介」
「こーすけ君」
「アサヅキ」
「浅漬」
「アサヅキコウスケ」
「浅月さん」






 誰だよどさくさに紛れて浅漬けとか言った奴は。
 気分悪いっつの。
 浅月?香介?
 ナンだよそれは。 どんな物質の商号だよ。
 どこで売ってんだよいくらすんだよオマエのお口に合うのかっつの。

 呼ぶな、
 勝手に呼ぶなって。

 浅月?


 俺はそんな名前じゃない。





         ところで







 が両断できる漆黒の絨毯
 壁紙だか包み紙だかを焦がして焼き尽くしてくたばったナイフ
 そんなものに俺は切れやしない
 でもまぁ豆腐でだって切れるよ まぁ。
 だってどんな物質か分かんねぇもん、ワタシ。
 あれ?ワタシだっけ?
 それって何か違うだろ。  あぁ、あんま興味無い? 実は俺も。


 それより飛んでみようや。
 錆付いた手摺り乗り越えて。
 足が引っ掛かって折れてもあんま関係ないだろ。
 どのくらい必要なのか俺という生物(?)は分かってねんだし。
 飛べればいいんだし。
 足を捧げて翼を手に入れてみる?
 いやゴキブリの羽だったら足捧げるだけイヤかもしんねーぞ。
 夢がない?




 いや








 夢だろ。














 終





管理人の授業中の落書きより抜粋。(…)
ここの浅月さんはこんな感じ…