23


 また 響き始める








  + 自転車 +








 そこは特等席。

 誰かに与えられたわけでも 誰かから奪い取ったわけでもない
 当たり前に ある場所で 居場所で
 だから
 特等席。





 一番最初はずっと小さな自転車


 後ろに運転席を乗せた運転手気分で
 よろよろと頼りなく
 それでも力いっぱい漕ぎ出すペダル





 ぐんぐん越えて行く町の景色が気持ち良くて
 少しだけ不安で
 その背中にしがみついて



 駄菓子屋
 へちま畑
 学校のプール


 滑るように抜けて行く風景と
 アスファルトを照り返す日差しが眩しかった











 少しだけ大きくなった自転車


 相変わらず偉そうに
 それでもたまらなく嬉しそうに

 客を乗せ 運転手はペダルを漕いで





 少しずつ変わり行くパノラマ

 あのお店も
 あの畑も
 あの人の家も

 思い出のある場所は少しずつ減って行くけど

 壮大なところだけは何も変わらず


 周りからかけられる声に
 向けられる笑顔に

 その背中に手を回すことはできなくなったけれど



 いつの間にか
 前から聞こえてくる
 いつの間にか
 口ずさんでるメロディー
 いつの間にか
 忘れられないほどに
 いつの間にか
 自分まで小さく口ずさむほどに





 いつの間にか  時は流れ





 流れたのか
 止まったのか



 分からないけれど風景は変わり



 風景は変わらなくても
 そこから一番大事なものだけがぽっかりと抜け去り






 その穴からぽろぽろと
 夕焼け色の涙がこぼれて こぼれて


 それを風が乾かすのを知ってから
 走ることで自分から風を作り出せることを知ってから






 それでもあの背中にもう一度
 手を伸ばす術だけはどうしても分からなかった










 きっと今でもあそこは特等席。




 少しだけ哀しい夢を見てみよう。










 少しだけ 本当に少しだけ
 広くなった運転手の背中越しに



 覗く青空はさぞかし綺麗だろう  と。












 終





爽やかな話が書いてみたかったんだけど……あれ?
言葉足りなすぎでわかりにくいですね;;;
再会前の話。
幼馴染の唄。
2ケツの唄でも可