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 目を閉じて君がいなくても








  + 上手な信じ方 +








私の10年後

10年後といえば、私は27才ですね。
あれ、一番女として輝いてる時期じゃないですか、もしかして?
うーん、高校を卒業して、うまく行けば大学を現役で卒業して…
またまた上手く行けばお医者さまになって白衣を着てバリバリと仕事をして、
同じではなくても 夢を追う強い素敵な男性と巡り会ってそのお嫁さんになれたらいいですね〜。




俺の10年後

正直、今がいっぱいいっぱい過ぎて明日も見えてない俺に、未来のことなんて考えられるわけないんだが…
普通に学校を卒業して、普通に就職して………
出来ることなら、ピアノを弾き続けたいな。
普通の家に住んで普通に料理して掃除して存分にピアノが弾ければ…って、
何で俺は10年後の話で夢ばっか語ってるんだ。








「夢を夢と言ってるうちは夢のままですよ、鳴海さん! 男の子ならその夢を生きる自分だけがリアルな現実だ!くらい言わないと」
「リアルな現実って、馬に乗馬する くらいアホなもの言いだな」
「………」





 今から、十年後。

 彼の十年後、彼女の、十年後。






「―――重ならないな」


 ぽつりと呟かれた歩の言葉に、ひよのは驚いたように目を丸くして。
 そして小さく笑って、
「嬉しいですね」
「何が」
「そんな顔でそんなこと言ってくださるなんて」
 おかしそうに笑うひよのに、歩が顔をしかめる。
 一体どんな顔をしていたと言うのか。

 …いや、たぶん 自分でも想像できるけど。






 現在 隣で肩を並べても。
 どれほど言葉を交わしても。
 どれだけ熱を 分かち合っても。



 最終的に重なっていないのならば。







「今の気持ちが行く先の未来なんて信じられない それならば今のこの気持ちだって信じられない   そう言いたいんですか?」



 目を細めて、微笑む姿がとても綺麗だと思う。

 エゴの塊のような自分の汚い部分をこんなにも綺麗に見透かす
 それがとても不快なのか 嬉しいのか 哀しいのか 分からなくて
 ただ胸が軋んで。

 今分かるのは


 彼女の言葉が
 例に漏れず、




 絶対的なほどの正しさを秘めていること。







 そして、彼女が次にどんなことを言うか、自分には想像できる。

 できるような 気がする。






『今は繋がってるじゃないですか、鳴海さん』



 思い出が重なるのは振り返って見たときのみで、この場所からは見えない。

 今が繋がっているから。
 これから重ねていけば  いつか振り返って見たら  重なっている。



 それだけ。

 たったそれだけ。




 分かる。
 彼女ならそう言う。







 人の繋がりはこんなにも簡単で 脆そうで 強く
 優しく  厳しく


 まるで目の前で微笑んでいる彼女のようで。







 彼女ならああ言うと信じている。
 そして自分はそうだったらいいななどと子どものような甘い考えに耽りながら
 それでも信じられないということを理解している。


 彼女ならああ言うと信じられる。
 自分はそれを信じないと信じられる。


 彼女ならあの理想を投げかけてくる。
 自分ならそれを受け止められずに ただ遠目にそうだったらいいと切に願いながら







 そうやって繋がっていく。
 あるいは繋げ、あるいは重ねていくのだろう。


 そうやって繋がっていく、ことを信じられるだけの強さくらいはあると思う。












 終





ぐは。別人ですな;;
かなりラブラブ。やはり私が書くと弟君はヘタレだよ;
でもひよひよと一緒にいて、信じることが上手になってる弟君が書きたかった感じ。

あれもこれも全部信じる、とかはできなくて、やはり信じてないといえば何も信じることはできないけど、
それと近からず遠からずな、隣り合わせのものを上手〜にリンクさせて出来る範囲のものを信じて、
可能を信じるというのでなく、不可能を信じないというか。
遠まわしに、ずるく。
純粋に何かをストレートに信じるのは勇気とか馬鹿さとか単純さとか強さとかが要って、
こんなやり方はとにかくずるく、弱く、臆病で、確実で、だから自己嫌悪とかしたりして、
ただそんだけ。
どっちもいるから比べたり並べたり重ねたり繋げたりして、最終的に
あぁ人間ってむかつくな、汚いな、複雑だな、んで愛しいなってなる。
勝手な話。