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 信じずとも、物事は繋がって行く。








  + 花言葉 +








 俺達は、  あしの花。













 雑誌を読んでいる途中、視線を感じそのまま口を開く。

「…なんだよ」
「ん?何が」

 相手もすぐに返事をする。
 歩は目線を雑誌から離さずに嘆息して、
「さっきから何見てるんだ」
「見たら悪いんか?」

 顔を上げると、テーブルに向かい合う形で座ってこちらを見ている火澄と目が合う。
 いやにご機嫌そうな顔。
 半眼で再び嘆息し、歩が小さく言う。

「別に」
「なら ええやん」
「…良くはない」
「なして」
「気が散る」
「集中力散漫やなぁ」
 そう言ってくすくすと笑う。
「何が面白いんだ」
「別にー。 若いうちは色んなものが面白うて  今のうち出来るだけのもんを楽しんでおきたいやん」
「………」
「今の  嫌味。  わかる?」


 そう言って、にこりと。
 笑う。




 笑ってばかり。





 笑うか、

 可哀想な自分をひけらかすような そんな悲しい顔
 そればかり。






 確信済みかは知らないけれど


 卑怯だ  と 思う。
 なんとなく。






「お前、ムカつく」

「なして」
「なんか  ムカツク」
「あはは。 詭弁に論理を用いるモンが簡単に"なんか"なんて曖昧な言葉使うなや」


 楽しそう。


 楽しそうに、 笑う。




 全然楽しくなくても笑えるものなんだな、人は。







「今日の夕飯 蕎麦言うてたやろ。 一緒に買い出し行こか?」
「………むかつく





 泣き声が聴こえる



 叫び声  が



 繋がっている者にだけ 届く



 何にも 響かない コエ。








 お前は歌えやしない。
 俺も歌えやしない。




 この命は音を持たない。
 音の無い声で叫び
 渇いた涙流して うずくまるだけ。









 俺達は歌えやしない。




 俺達は   あしの花と 同じ   唄えない


 それこそが 音楽   だろうから











「何で お前と俺が対になってんのかは知らんけど―――」
「…?」
「お前といると運命を意識しないでえぇから楽や」
「…それは それは。」
「でも お前と俺が対になっとるんも運命 かな」
「そうなるのか な」
「だったら その運命は否定しないでもえぇ思うわ」
「……それは それは。」
「…お前 俺の話聞いてる?」
「あぁ 聞いてるよ 返答に困ってるだけで」
「困っとるんか」
「困ってるね」















 俺達は  唄えやしない。























 俺達は      あしの花    だから。












 終





なんてことのない話。なんてことなさすぎる話。

あしの花の花言葉:神の信頼、音楽。
ちなみにそば(蕎麦)の花言葉は 「あなたを救う」。

このフォモどもめ……