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 そして今日もまた








  + 夕暮れ +








 すっかり初夏も通り過ぎた感じで、夏休みにも入っていないというのに、茹だるような暑さだった。
 空は真っ青で、グラウンドには野球部の歓声が響き渡り、白球が次々に天空に落とされて行く。

 ぎらぎらと熱線を浴びせてくる太陽
 蒼空に流れていく雲
 吸い込まれる白球
 思い出したように時々流れ 髪をなびかせる風


 そんなものをじっくりとなぞることが出来るほど、頭が冷えているのが信じられないほどに。
 暑い。




 こんなにも熱いのは隣にこいつがいるからだろう。
 こんなにも頭が冷えてんのも、隣にこいつがいるからだろう。

 夏の暑さとは関係ねぇけど、頭が割れそうなほどにキツいのも。
 胸が裂けんじゃねぇのってほどに 軋みまくってキツいのも。
 息が出来なくて常に呼吸困難、脳が正常に機能しなくてキツいのも。


 すべてこいつのせいだ。





「浅月さん、どうしたんですか? ボーっとしちゃって」


 このクソ暑いのに。
 この声だけで頭ん中の温度が3度くらい上がるのが分かる。



「いや、別にー」
「この暑さですからねぇ」

 ふふっと微笑んでまた前を向く。

 いや、確かに暑さのせいだけど、原因は嬢ちゃんにあんだけど。







 暑い。
 この暑さは正常さを失わせるものなのか。
 それとも 正常さを失っているゆえの熱さなのか。
 それならば 精神を狂わせる原因は。

 分かり切っているというか 自分で認めまくってるどころか
 少し 苦しみながらも楽しんでさえいる この感情。


 青春してるじゃねぇの、俺。






 この身体の中の滞りまくりの熱を言葉にしてぶち撒けちまえば 温度は少しは下がるかな。
 それとも一層熱を増して この身体を灼き続けるだろうか。



 押し付けたいわけじゃねぇけど。
 言いたかったりもするし 言いたくなかったりもするし
 結局はこの葛藤も
 ただ言えないだけの単なる言い訳だし


 単純と複雑は対極でありながら共存、手を繋いで俺ん中に住み着いている。







「ホント暑いなー。 嬢ちゃん、アイスでも食うか?」
「奢りですか!?」
「すぐそれだよ…」



 想像した通り
 目をきらきらと輝かせて笑顔を向けてくる。

 分かってたコトだよ。
 想像した通りなんだけど
 やっぱり熱が上がるんだよ、悪いかよ単純でよ。






 普通の感情だろ。








 出会った
 惚れた
 笑顔が見たい
 声が聞きたい
 手ェ繋ぎたい
 触れたい
 抱き締めたい
 キスしたい
 ヤリたい
 いけるとこまで 試せるとこまで 全部






 誰もが持ってる感情だろ。


 そんなに簡単でもない、でも難しくもない はずなのに。




 口にすることは出来ず
 このもどかしさ
 この痛さ、苦しさ 辛さ   熱さ
 それに眉をひそめながらも
 幸せを感じてしまったりして







 この暑さには不釣合いに軽やかな歩きで進んでいく
 目の前の新種の動物を追いながら







 思いを口にする何度目かの覚悟をして


 何度目かの後回しに妥協して



 青春の象徴みたいな青空がシアワセ色に姿を変えて
 こうして言葉は俺の口から生産されずに
 またしても熱を燻らせ





 そうして今日も日が暮れる







 あぁ、ジーザス。












 終





題違う?(汗)
でも夕暮れって聞いて一番最初に思いついたのが、
昼にやろうと決心した事が、結局できなくていつの間にやら日が暮れて、それで何日も経っちゃうってやつ。
ちょっと青春みたいな話が書きたかった。
私のこーひよでは、浅月はひよひよに思いを伝えないのは、気恥ずかしいとかそんなんでなく、漠然と面倒だからっての希望。色んな意味でメンドゥー。だからこの距離でいいじゃんって感じ?でも凄い好きなの!(妄想)