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 離れれば もう二度と出遭うことは








  + 交錯地点 +








 交錯する運命。
 通い合わない運命。
 相容れない運命。


「一緒に居れるはずがないんやな」
 小さくぽつりと呟く火澄に、歩が不満そうに嘆息した。




「交錯? なら少なくとも会えるって事だろ」

 平行線のそれぞれに立っている二人ではない。
 ならば いつか出遭うことも




「今離れたら終わりやんか」



 よくある「交錯」のイメージ。
 バツ型の道は右から、左から線が中心に向かって伸び、それから出遭い、でもそれは一点だけで。
 また離れてしまう。
 もう出遭うことはない。





 その「運命」とやらがいくつも絡まる根のように伸びて行くものだとして
 そうすれば
 またいつか
 出遭うこともある かもしれないけれど。





「なら 今は 二人で居るって事だろ? 贅沢だな、火澄」
「悪いんか? もっと先を、もっと上をって望むことは」

 人間の性やないか。


 そう呟いて、可笑しそうに
 少し寂しそうに

 笑った。







 今は 二人で居るって事だろ?








 あぁ、そのことならとっくに俺だって考えたわ。
 足りんかっただけで。




 同じこと  考えたわ。








「あぁ、やっぱ今は 今は、繋がってんやな」










 この先はどうか知れないけど。
 今は笑うよ。






 先は望まず






 今 確実にある、喜びだと言い切れるだけの事実を。




 たった一点だけの喜びを、

 この世界の全ての幸せを独り占めしたかのように
 笑うよ。












 今自分の目の前に、
 否、隣に居るのは



 このような存在で あってありえない人間なのだから。


 どんなに一点でも 一瞬でも

 その人間と繋がることができたというのは
 自分の忌むべき運命が成したことだから。












 終





いつか会えるとかそんな言葉、もとい事実すらいらないんだよね。
今居る時間をできるだけ延ばしたい、そう思うのが常だと思う。
離れてしまえば、その人間がいない世界に慣れてしまうんだから。
ちゃんと息ができてたりするってのを「受け入れる」ってことだとして。

とりあえず白火澄仕立てです(爆)