08


 「幼馴染っていいもんだよな」

 たぶん、
 今年吐いた本音にして最大の嘘。








  + 静かな生活 +








 急に何もかも嫌になっちまった日。
 誰にも知られず、何も告げず。

 どっかへ行っちまおうと思ったとき、
 あいつの顔が浮かんで止めた。



 一人で行くのを、  止めた。









 横に流れて行く景色。
 これから知らない場所に行くんだろーか、何も決めず何も分からず。
 ただ どっかに行きたかった。
 こういうのを  消えてしまいたい気持ち とか言うんだろうか
 分かんねーけど



 まぁ とりあえず
 電車に乗って90分経過。


 横に座ってる奴とか一度も口をきいてない。










 電車に乗って130分経過。


 見える景色はもうほとんど ここどこ? 的。
 コンビニも見当たらなきゃ 人通りもほとんどない。
 静か〜な空気全開の ド田舎。





 周りを一回りちらと見回すと、車両には俺とこいつ以外誰もいなく、やけに静か。
 こいつは何も喋らずにただぼんやりと前を見たり、時々下…靴紐?見たり 左を見たり(俺は右)。


 だから 余計に  静か。




 俺何やってんだ?
 とか  まともなことを考えてしまうほどに 静か。










 電車に乗って170分経過。






 降りた駅はがらんと人は誰もいない。
 横に並んで立って、空を見上げたとき、
 その空の青さに、二人同時にため息を吐いたとき。



 疑問をぶつけてみた。







「なぁ…なんで ついて来たんだ? ホントに良かったのかよ」




 全部投げ出して、逃げ出して。
 逃げ切れるはずはないのに。

 それに
 俺と違ってこいつは、 持ってるもの たくさんあるのによ。






 自分で呼んだくせに、ちょっと罪悪感があるんだよ 俺は。






 そしたらこいつは今日 いや、電車に乗ったときからだな、それから初めて俺を見て











「お前がいるなら何だっていいよ」









 とか 言ったんだよ、

 目線斜め45度下げ。
 少し顔赤くしたもんだからこっちが赤くなっちまった。










 何だっていい?

 バカやろうめ。
 可能性とか、未来性とか

 この呪われた運命を除けばホントたくさんのもの持ってるくせに



 俺を一番に

 こんな俺を 一番に 置きやがって





 ホント   バカヤローめ。













 お前がいれば何だっていい?

 ばかやろうめ。





 それは俺だよ

 俺の方なんだよ。











 せっかく来たけどさ、
 帰るか。







 どのみち逃げられんとか そんなんじゃなく。
 イヤなこととか ホントたくさんあるけど。






 目を背けてることもたくさんあるけど。












 お前がいるなら何だっていいし。












 終





香と亮子さんが愛の逃避行、
田舎で二人静かに暮らすという妄想から生まれ、消えた話。(爆死)