02


 救いは一つだけ。
 きっと。
 知ってるのに救えない。








  + ロザリオ +








 憎かったわけじゃない。




 この手をその首にかけたのは決して憎かったからじゃない。







 知っていた。




「殺して……―――アイズ、僕を殺してくれ」






 それしか、救いは無いと。
 他に希望は存在するのかも知れなくても。
 それを探す時間も、力も。


 希望を探せる希望すら、小さな光すらも。




 与えられていないんだから。









 憎かったわけじゃない。


 その首にかけたこの手がどれだけ恐怖で震えていたか、知っていただろう。
 それでも穏やかな笑顔を湛えていたお前を恨みたい気すらした。








 憎かったわけじゃない。



 救いはそれだけだと知っていたから。











 ――――――知っていた、けれど。












 憎かったわけじゃない。







 お前を殺せなかったのは憎かったからじゃない。










 酸素を欲していた肺を解放し、咽ているお前の目が言っているのは痛いほどわかった。


 嘘吐き、とか。
 なんでだ、とか。





 わかっている。




 救いはそれだけだと。








 お前が憎いわけじゃない。
 それでも俺はお前を殺せない。










「…すまない、」

「カノン、すまない」




「カノン、―――――」











 願いも、希望も、想いも、


 すべてを込めて呼んだとしても、





 この口からその名前は懺悔の台詞としてしか。











 救いはそれしかないお前を殺すこともできないのに、

 そんな自分に祈る資格はないのに。










 それでも、


















 それでも。














 終





…あ、独白って初めてだ…
あ、蝶々が飛んでる………