救いは一つだけ。
きっと。
知ってるのに救えない。
+ ロザリオ +
憎かったわけじゃない。
この手をその首にかけたのは決して憎かったからじゃない。
知っていた。
「殺して……―――アイズ、僕を殺してくれ」
それしか、救いは無いと。
他に希望は存在するのかも知れなくても。
それを探す時間も、力も。
希望を探せる希望すら、小さな光すらも。
与えられていないんだから。
憎かったわけじゃない。
その首にかけたこの手がどれだけ恐怖で震えていたか、知っていただろう。
それでも穏やかな笑顔を湛えていたお前を恨みたい気すらした。
憎かったわけじゃない。
救いはそれだけだと知っていたから。
――――――知っていた、けれど。
憎かったわけじゃない。
お前を殺せなかったのは憎かったからじゃない。
酸素を欲していた肺を解放し、咽ているお前の目が言っているのは痛いほどわかった。
嘘吐き、とか。
なんでだ、とか。
わかっている。
救いはそれだけだと。
お前が憎いわけじゃない。
それでも俺はお前を殺せない。
「…すまない、」
「カノン、すまない」
「カノン、―――――」
願いも、希望も、想いも、
すべてを込めて呼んだとしても、
この口からその名前は懺悔の台詞としてしか。
救いはそれしかないお前を殺すこともできないのに、
そんな自分に祈る資格はないのに。
それでも、
それでも。
終