決して忘れることなんてない。
 それなのに 世界はこんなにも簡単に、
 君のいない明日を連れてきてしまう。







"明日"の帳が降りる音













 何年も経った今でも、鮮明に思い出せることがある。
 …否、忘れられないと言った方が正しいのかもしれない。










 マスターに連れて来られた少年は 聞いたところによると、
 故郷の星ではずっと奴隷として、機械いじりばかりの日々を送っていたという。
 それで彼が作ったというドロイドを除いては、友達といえるような存在はなかったらしい。

 そのためか、ここへ来てからも他のパダワン達と打ち解ける様子もない。
 見る度に独り静かに修行に勤しむ日々を送っているようだった。




 それである日、声を掛けたことがある。


「また独りか? いい加減友達の一人でも作ったらどうだい?」

 覇気もなくぼんやりと佇んでいる彼にそう尋ねると、
 彼は無理に無表情を装った声で「必要ありません」とだけ答えた。

 やれやれ、と心の中で嘆息しながらも、彼の顔色を見計らって
「そうなのか。 友達は必要ないのか…それは残念だな」
 と わざと盛大にがっくりと肩を落とし、踵を返そうとする。
 すると彼は
「…?」
 と不思議そうな顔で、予想通りどうしたんですかと問うてきた。


「どうって…私が君の友達になりたくとも、君は友達は必要ないと言う。
 これは残念なことだなと思ったわけだよ」

「……………」

 彼は一瞬驚いた顔をすると、今度は困惑した表情になる。
 こんな簡単な言葉の意味を、計りかねているんだろう。

 そこで今度は彼の丸い頭をぽんと叩いて、
「アナキン、私を君の友達にしてくれないか?」
 顔を覗き込むようにして言う。
 彼は今度もまた数秒黙り込んで、呆然と口を開いた。

「マスター……ありがとうございます」
「おかしいな。 なぜ礼を言う?」

 もう一度彼の頭を叩いて笑い掛けると、
 今度は彼も満面に笑みを浮かべて微笑った。


「………ありがとう、…」














 ありがとうが、

 あいしてるにさえ 聞こえたんだ

















 あの笑顔が、どれほど
 私の心を照らしたか お前は知らないだろう。












 それなのに
 いつからか 歯車は狂い出して。

 否、狂うべくして狂ったのかもしれない。

 お前に道を誤らせたのは 私達だから。








「I hate you...!」





 同じ唇から
 これほどの憎しみを


 溢れ出す愛を零した あの

 同じ唇で告げさせた。




 瞳の色は違っても
 流れる涙の色は 確かに同じだったはずなのに。





 愛や、希望や、自信や、誇りや、
 その身に溢れんばかりのたくさんの可能性


 捨てろと言われて簡単に捨てられるものなど、
 忘れろと言われて容易く忘れられるものなど、

 はじめから 持ってはいなかったな。




 お前は常に、大切なものばかりを持っていて
 それを私に見せてくれていたんだ。




 誰かを想う心、

 それは簡単には心の中に閉じ込めておくことなどできないはずだった。

 こうなった今も、私がお前を悔いるこの気持ちを
 止めることなどできないのと同じように。









 決して忘れることなどない。
 決してこの戒めから解き放たれることはない。


 それなのに、

 世界は少しずつ、少しずつ
 お前がいない今日に慣れて

 お前がいない明日を迎えてしまう。




 この耳が、心が

 あのときの お前の声を忘れてしまうことはないのに。











   終








この二人が好きでなりません…!!
本当考える度に、他に道はなかったのかなぁと考えて胸が切なくなります。

いつも癒してもらいまくりの、大好きなO葉さんに捧げさせていただきました…!!(>m<)
ヒッ私ったら身の程知らず!(…)
でも愛です(真顔)


05/09/04


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