めばえつづけ
 ついえつづける










          と絶望











 絶望するのが怖いから自ら希望を絶っていた。
 それは 彼女にはもうとっくに見抜かれていた。




 諦めることが随分と上手になっている自分に向けて、自嘲の意味でカノンは笑った。
 両手にいっぱいの希望を抱えているような そんな顔で ひよのは笑った。


 彼女が口を開くと耳を塞いだ。
 綺麗な言葉が耳に浸透してくるのがとてつもなく嫌で。

 どう考えても綺麗事にしか聞こえないそれならば、
 ちらつかせてくる希望はそのまま絶望に繋がる。





 希望は絶えたと確信して、その現実だけを信じようと決心した夜。


 それでも両手にいっぱいの光のようなものを抱えて目の前に現れた彼女に、目を覆った。

「もう僕に何も見せないで欲しいんだけど」
「何のことですか?」
「頼むから、」


 もう 何も見せないで欲しい。



 その存在が眩しいから。
 その存在が光みたいだから。
 その存在が暖かだから。




「僕の前に現れないでくれないか」




 心から言いたかった言葉に、身体中から冷たい汗が噴き出した。



 するとひよのは、面白くもない冗談に付き合いで笑うような笑みを浮かべて、
「何言ってるんですか、カノンさん」

「私は何も持ってません。 何も見せません。」

「あなたが、私に何を見てるんですか?」


 希望を。
 「偽」と前につきそうな
 レプリカみたいな
 信じたらいつかきっと痛い目を見る、そんな

 紛れもない




「絶えて落胆できるほどの望みをカノンさんが私に見出してくれてるんでしたら、それはカノンさんの中にあるんですよ。
 私はきっかけにしか過ぎないんですよ」






 彼女の手の中に希望はない。
 絶えるほどの望みはない。

 あるのは色すらわからない光だけ。



 それが
 自分の瞳に入って希望という形に映っただけ。




 ああ、墓穴を掘った。







 何度諦めてもいつの間にか期待を抱く。
 どれだけ捨ててもいつの間にか手には何らかのもので塞がっている。
 そんな自分への自嘲の意味でカノンは笑みを浮かべた。

 傍ではひよのが
 勝ち誇ったような顔で笑っていた。








   終








望む分だけ絶える、希望と絶望はプラマイゼロとかそんなかもしれないけど、
自他共に信じれるってのはそういう量的なものも超えられると思う。
希望とか自信とかってのは物理的なもんじゃないからそうだといいなって思う。

「勇気は筋肉と似ている」って格言があるんだけどこの言葉が大好きなんだよね。
勇気も、使えば使うほど強くなる。 自分で感じられるほどの強さってのは自信になる。
信じるのが勇気かも知れんが、こうして勇気を鍛えてそれを信じるってのもあるんだよね。

希望があるから絶望がある、とか幸福があるから不幸もある、てのもいいけど、
希望も絶望も幸も不幸も巡り巡ってて、持てる力を使って上手にできるだけ嫌なものに当たらないように拾ってくってのもいいかもしれない。
次は幸せに当たるだろうから不幸を耐えるんじゃなくて、不幸に当たってしまったからそれを超えて次のクジを引きに行く、みたいな。 あるがままに。
まぁ…考えによっちゃあ不謹慎な発言だけども。


3周年企画で一番はじめにいただいたお題、「希望と絶望」 カノひよ文、です。 募集開始して数分だったよ…!(驚)
シンプルでいかにもこの二人にぴったりなお題で。 故に難しいー!そして楽しかったです。
ご希望に沿えていることを祈るばかりです…(汗)
ありがとうございましたー!m(_ _)m


04/09/18


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