ワガママ言える立場じゃないけどよ。
 時と場合を考えろって思う。マジで。











タイミング











「ラザフォード! 俺はお前が好きだ!!」
「………」


 勢いに任せて想いを口にした俺を、ラザフォードは呆気に取られたように眺めた。
 いや、呆気に取られてるのかどうかは分からんが。

 とりあえずいつもの眠いのか何も考えてないのか何なのか分からないぽかんとした無表情で俺に目を向けている。
 …要するに普段どおりか。


 まぁいい。
 とりあえずこっちの話を聞いてないってわけじゃあないだろ。


「本当なら俺が勝手に想ってるだけだから報われたいとも応えて欲しいとも望める立場じゃないんだが…
 せめて答えだけくれないか?
 ダメだったら俺はすっぱり諦めるからよ」

「………あぁ、わかった」


 無表情のまま、こいつはぼんやりと言った。
 …とりあえず、話は聞いているようだ。



 まぁダメだったらすっぱり諦めるってのは本当だった。
 望みがない相手も挫けずに想い続けるってのは俺には無理な話だ。
 頭ん中にいつも置いて考えるなら、相手からも見返りがある人間がいい。勝手な話だけど。

 だからダメとか言われたらそれですっぱりさっぱりこいつのことを忘れてしまおうと思ってたのに。
 てか最初からダメもとだったんだけどな。
 ただ頭ん中で気持ちを燻らせるよりはマシだってことで告白しただけだ。
 早く断ってもらってラクになろう、とかそういう考えから出た行動だったのに。



 数日後。



 あろうことか



「俺も、おまえが好きだ」




 とんでもない答えを返してきやがった。




「……は?」
「聞こえなかったか?」
「いや、聞こえたけど」
「ならいい」
「や、…マジで?」
「あぁ」

 信じられない、といった言葉が顔中に出ているんだろう。
 そんな俺にラザフォードは一瞬だけ眉を寄せた後、それでもこっくりと頷くと踵を返して行ってしまった。

「…………」

 スキならスキ、キライならキライ。
 どっちでも返事さえもらえれば楽になると思ったんだよ、俺はさ。

 なのに。


「今日何日か分かってて、今日返事を返してきたのかアイツは……」








 今日って4月1日。

 エイプリルフールだろ。







 真顔で嘘ついてきたのか?
 それとも至極真面目な返答がアレか?





 おいおいおいおい頼むよ、
 なんでこんなコトでやきもきしなきゃなんねんだよ俺。


 楽になるどころか悩み続けるっつーの。




「一体あいつはどこまでボケてやがんだ…」



 こういう大事な返事は、選べよタイミングをよ。





 やばいね。







「惚れ直した」







 とりあえず明日もう一回聞き直しだ。






 あぁ。あと24時間、俺の脳の自由は拘束されたか。













 終









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エイプリルフールネタ。珍しく時期ものだ…
あれ?香ラザってもしかして初??

05.04.01


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