超えた果ては望まない。
 どうか超えるその瞬間、隣にいるのが君でありますように。















          + 君の鳥は歌を歌える +


















 いつも傍にいる振りをして、
 立っている場所はいつも背中合わせ。


 いつも二人同じ場所を見ている振りをして、
 貴方はいつも私より高い場所から ずっと向こうを見てるの。


 私は貴方の肩越しに見える世界が良かったのに。

 私には 貴方の肩は少し高すぎたのかな。












「カノン君、本当にあたし達を…あたしを殺すつもり?」
 突然問われた言葉に、カノンがきょとんと目を丸くする。
 しかしすぐに笑って、
「そうだよ。 何を今さら…」
 頷きながら返した。


「できるの?」
 試すような視線で、理緒が少し上にあるカノンの目を見据える。
「前は、未遂に終わっちゃったけどね…」
 病院でのことを思い返し、カノンは苦笑して。
「でも、亮子達の邪魔が入らなかったら、できただろ?」
「手、震えてたくせに」
「――」

 痛いとこ突くなぁ。
 口の中で呟いて、カノンがまた困ったように笑う。
「そんな事ないさ」
「そう? でも嬉しかったんだよ」




 何よりも固い決意で進んだ道だから。
 きっと貴方は迷わずに。
 震えることなく、怯えることなく
 その手を引き金に掛けられると思っていたから。


「殺されるのはゴメンだけどね」







 貴方と繋げない手を持て余す日々に未練は無いけれど。




 いつか二人で笑い合える日がきますように、




 そう願う自分に、まだ絶望を見せたくないから。









「あたしは諦めないよ」


「…僕だって」




 光に満ちた理緒の瞳に、カノンが手を銃の形にし、真っ直ぐに向ける。




「もう手は震えてない?」


 勝気な表情で笑って問う理緒に、カノンも柔らかい笑みを浮かべた。




「あぁ。 理緒ももう焦りはないだろ?」
「うん」





 あの時は震えが止まなかった肩も。
 最悪の時を想像する度に寒気が走った背中も。




 もう大丈夫。
 震えていない。


 不安や恐怖で凍り付いてなどいない。








「強くなったね。 少し、哀しいかな」
「お互いね」





「それじゃあ、また」
「うん、それじゃあね」












 そうして、背中を向けた。




 完全に違う場所に向かって歩くために。
 進むために。













 まだ成長し切らない、軋んで悲鳴を上げる心には気付かない振りをして。
















 そうして、違った場所で。
 ずっと繋ぎたくて叶わなかった手を、二人して握り締める。











 もう、震えてなどいない。





















  終







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りんごしゃんのサイトさま8満打をお祝いしたく、捧げさせていただきましたー!
この場には初となるカノりお。
祝いの場にふさわしくない内容ですが(滝汗) 愛だけはしつこいくらい詰まっております!


カノりお大好きv
カノひよよりずーーーっと甘めです。でもやっぱり切ないの希望。
カノひよは痛暗いの、カノりおは切ないの希望。(勝手)


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