光を、あなたに。





 きれいな、




 光を。





















  +愚ストリート+





















 何かを守るためには、何かを失う。



 でも






 いつだって








 奪われてばかりしか いられない場合は





 どうしたらいい?

















 光を見せて。


 信じさせて。





 どんなに安っぽいものでもいいから





 希望があるって

 前に行っていいって




 ちゃんと先はあるって









 嘘でもいいから・・・




























「ひよのさんは、どうして彼らを守ろうとするんだい?」
「彼らって…理緒さん達のことですか?」
「そうだね。・・・キミの体を張って彼らを守ることに、何か意味でもあるのかい?」

 カノンの言葉に、ひよのはきょとんとして答えた。
「意味なんて。ありませんよ」


 自分の命を掛けて、守ることの 意味は。


 その答えに、カノンは訝しげに眉を寄せて。
「それじゃあ、どうして…」
「意味があるとするなら…私が守りたい人、その人が意味そのものです」
「…………」













 駄目だ。









 カノンが俯き、両手で顔を覆う。








 やっぱり、
 眩しすぎて。

 綺麗すぎて。















 自分のしようとすることに、間違いなく 彼女は邪魔になる。


















「…何かを守るためには、何かを犠牲にしなければならないと。そうは思わないのかい?」
「それはつまり、例えばご自分を。犠牲にした上でなければ、誰かを救えないと言ってるんですか?」


 ひよのが首を傾げた。
 そして、くすりと小さく微笑って。




「何かを犠牲にしたら、必ず誰かの涙が落ちますよ?」

 それで誰か救ったつもりだなんて。



「自己満足ですね。…カノンさん、あなたは今までにどれほどのものを失ってきたんですか?」


 失った分、犠牲にした分。
 何かを得られるはずだと


 信じることはないにしても




 必死で祈りながら。


























 ――――――




『キミは、優しすぎるから…―――』







『…裁きは僕が。』























 どれほどのものを失ってきた?


 どれほどの気持ちを捨ててきた?





 その代償は あまりにも大きすぎたのに。















 カノンが俯き、無言で拳を握り締める。
 その様子を眺めながら、ひよのが無表情に呟いた。


「それで。守るべきものが、大切なものがたくさんありながら。あなたはいくつ、救えそうですか?」






























「―――…じゃあ。何も犠牲にせずに、何も失わずに! 誰かを守れると言うのか?」




 そんな甘い話。

 あるはずが。




 そう言ってぐしゃりと前髪を掻き上げると、カノンは大きく息を吐いた。




「どうすれば人が救えるか、なんて知りません。…でも、ただ。あなたが幸せになることが一番だと、望んでいた人だっていたはずだ、と言ってるんです」

「………………」


























―――――


『お前がいれば、俺は失うものなど』












『暗闇でも、二人なら迷わず進めるだろう』


























 何を失ってきた?





 一体




 どれだけの ものを・・・・・・

































「人の救い方なんて分かりませんけど。自己満足で人は救えませんよ」






 俯いたままのカノンに、ひよのが静かに、しかしはっきりと言う。













「はは…やっぱり、ひよのさんの言葉は耳に毒だよ」


 力なく笑って言うカノンに、ひよのもまた微笑って言った。





「当たり前ですよ。言ってる私が、どれだけ痛いと思ってるんですか?」































 今は笑って。

 今だけでも。




 またすぐに
 行かなければならないから。











 暖かい光の中で




 目の前にいる人間と微笑い合えているだけで

 それだけで いいと







 そう思うには

















 あまりにも この手は

 汚れすぎているのだから。


















 終







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