信じさせてみせて。





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『自分のことが一番信じられない』




 弱くて、大切なものを何ひとつ守ることができない自分。
 弱い自分。自分にすら信じてもらえない哀れな自分。
 弱い自分。弱い自分。弱い自分を信じるなんてできっこない。






 ヨワイ。









「だから!あなたは弱くなんかないですってば!!」
 拳を握り締めて力説するひよの。

「なんで俺が自分の事を信じられないだけであんたが怒るんだよ」
 頬杖ついて、嘆息して。


 全然嬉しくない。
 褒めて欲しいわけじゃない。
 弱いといっている自分を否定して欲しいわけでもない。


 だからそういわれても 何も





「怒りたくもなりますよ!私はこんなに鳴海さんを信じてるのに・・・」
「だったら信じるな」








 信用。





 これほど重く背中に伸し掛かる言葉もない。






 信じて裏切られることよりも
 信じられてそれを裏切ってしまうことの方が


 ずっとずっと痛いんだ







「自分の力を信じる勇気も力もない俺のことは信じるな。信じられたって俺はあんたに何もしてやれないし」

 信じて欲しいわけでもない。







「私は、信じて欲しいですよ!」

「?」


「私は、信じてもらえなかったら辛いですよ!?」

「・・・何を・・・・・・」



「鳴海さん、自分を信じられないのなら、他人を信じることならできるんですね?」

「・・・・・・?」

「じゃあ、あなたを信じる私を信じてください!」



















 心に一陣の風が吹き抜けて。










 自分という人間をこんなカタチで否定してきた人間。
















 この目の前の人間は





 この目の前の人間だけは





 大切なものを守ることもできない自分にすら信じてもらえない哀れな自分を

 こんなにも弱い自分ですら


















 ゆるぎなく信じ続けてくれるのだろうと。
















 信じることはできなくても


 思い込むことが許されるなら。






















 信用の真意や価値や

 そんなことで沈んでいた肩から





 信頼。


 その言葉が少しだけその重さを解き放って

 一陣の風となって 奥底で霞んでゆく想いを引っ張り出して。











 それは祈りにも似た




 懇願に近い 願い。














 どうか



 どうか。










 目の前の信頼という名の人間を


 裏切れないだけの 勇気と力が欲しい。

















 終


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