会いたい日に。


















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「や、ルック。 久しぶりだね」
「……なんでいるの?」


 驚いた様子など億尾にも出さない、そんな風の魔術師の様子。
 それが少し不満だとで言いたげに、エンジュはぴっと上げていた手を降ろした。



「せっかく久しぶりに会ったというのに。 大したご挨拶だ」
「…ぼくにとっては、きみとどのくらい会ってなかったかってことよりも、なんでここにきみがいるかってことのほうが興味がある」
「なるほど、それはごもっとも。 きみの興味がどこに向かっているのかは分かった。 でもぼくにとっては重要なことじゃない。」

「……………」

 なぜか分かるか? と問うようなエンジュの視線に、ルックは頭を抑えた。

「あのね。 きみ、いま何時だと思ってるの。 ぼく寝るとこだったんだけど」
「なに? 今度はぼくが今何時だと思っているかということなんかに興味が湧いたのか、きみは」
「…………頭わいてんのはそっちだろ。」

 思いきりジト目でエンジュを睨んでやると、ルックはしっしっ、と追い払うように手を振った。


「今は恐らく、ちょうど日がかわった時間帯かな? そしてさっきの続きだが。 ぼくにとって重要なのは、どうしてぼくがここにいるかじゃない。 きみが目の前にいるってことなんだ」
「なにいってるの」


 抑揚のまったく無いルックの声を聞いているのかいないのか、エンジュは許可もなくルックと向かい合うようにして座った。
 彼が今しがた、入ろうとしていたベッドの上に。

「………」
「ルック、きみ、今日が何の日か知ってるかい?」
「興味ない」
「ルック、きみ、サンタクロースって知ってるかい?」
「……波に、乗ってくる…」
「へぇ。 今日が何の日か興味ないのにサンタクロースは知っているのか、きみは。」
「・…………」
「まぁいい。 会話ができるのは実にすばらしいことだからね。 そしてサンタクロースだけど、波に乗ってくるのは南の地方の話だよ。 北ではトナカイとかいう生物にまたがって駆けて来るらしいんだ」
「たぶんそれ、間違ってる」
「なに? トナカイにまたがって駆けて来るんだぞ。 波に乗ってくるより格好いいじゃないか」
「トナカイがどんな動物か知ってるの? それにまたがって走ってるなんて間抜けもいいとこだよ。 北では、トナカイにソリを引かせて飛んで来るんだよ」
「へぇ、そうだったのか。さすが一日中、年がら年中本だけを読んで過ごす人生、いわゆる"HPを1たりとも消費しない人生"を送ってないね」
「…きみ、ぼくに喧嘩売るためだけにここまで来たの?」
「んでだ。 そのサンタクロースは、どんな願いをも叶えてくれるらしい。 信じられるかい?」
「……。 そんな夢みたいな話信じるわけないだろ、子どもじゃあるまいし。 それに正確には。 サンタクロースは良い心をもった子どもの欲しいものを届けてくれるんだよ。 信じてないけど」
「ルックは信じないのか? 実際叶えられても?」
「何が叶えられたっていうのさ。 大体きみみたいなひねくれ者のとこにはサンタクロースも来ないよ、安心して」
「ぼくがここにいるのに?」
「…………はぁ?」

「ぼくの話ではサンタクロースはどんな願いでも叶えてくれる。 きみの話では何でも欲しいものを届けてくれる。 そしてだ、ぼくの前にはきみが現われ、きみの元へぼくが来たわけだ。 つまりきみとぼくが今こうして一緒にいるわけだ。」

「…………………………………」
「ん? 言ってる意味がわかるかな? ぼくは今とても素直な人間だと思うんだけどなぁ」

 エンジュの言葉を理解したらしく、何も返せずに黙っているルックに、エンジュが恐ろしいほどにきれいな笑顔を浮かべた。

「きみは何も願わなかったのか?」





「………更に悪くなったね、性格……」
「負け惜しみかな? それよりまだ気になってるの? ぼくがここにいる理由」
「もうどうでもいいよ…」




 結局いつも負けている気がするのだが。
 今日くらいは受け入れてやっても良いだろう。

 心の中でそう呟いて。









「どうでもいい? そうか、それは良かった。 それじゃ、ただいま、ルック」
「…………………」


 勝った気でいて、実は安心しているのだろう。
 受け入れて、もらえて。




 そうじゃなきゃ、こんなにも哀しいくらい、きれいに笑わないだろう。






「サンタクロースに感謝するんだね」
「素直じゃないなぁ」





 そう言って、笑う。
 そしてすぐに、「それならきみもね」とエンジュがからかうような視線でルックを見上げ、軽口を叩いた。





「あぁ、それには賛成してもいい」








 ぼんやりと放たれたルックの言葉に、エンジュがさらりと「きもい」発言をし、部屋から叩き出されたとかなんとか。





















  終







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ここまで甘い話を私は書いたことがありません。(棒読み)
うわ、うわわ……どうしようコレ。(滝汗)
幻水文が久々過ぎてどんなもんだったか忘れたよ…;この坊は思いきり攻めの性格ですね。
私の文では坊とルックはどっちつかずな感じなのに。
てか恥ずかしいよ、コレ…!!!!!

エニィウェイ!(anyway) 読んでくださってありがとうございますv
メリークリスマス★



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