I was born in place where is filled with much love.
I grew up in time when is filled with much glad.
...Still I was involved in unfortunally destiny.
I am happy.
I must be happy.
I cannot be want to cry.
I am happy.
I am happy.
I should be happy.
I must be happy.
...Even if, my heart is dying.
+リリィ+
「優しさって、なんだと思う?」
「・・・は?」
真剣な眼差しで聞いてくるエンジュに、ルックは半眼で答えた。
「だから、優しさって・・・」
「尋ねる人間が違うよ」
もう一度同じ質問をしようとするエンジュの言葉をルックが遮る。
なるほど、ごもっとも。
ぽんと手を打つエンジュを嘆息交じりに一瞥すると、ルックは本に視線を移した。
「先日の合同葬儀で、ナナミがフレイに言ったんだ。」
―――大丈夫だから、今はお姉ちゃんのそばで泣いたらいいよ、って。
「・・・ふぅん」
本から目は離さず、しかししっかりと相槌を打つあたりが彼の知られていない長所だろう。
「フレイはその日一日はずっとナナミの傍で塞ぎ込んでたみたいだけど、次の日にはまた元気を取り戻してた」
「・・・・・・」
つまり、何が言いたいわけ?
ルックが視線だけをちらと隣のエンジュに向け、問う。その視線に、エンジュはにこりと笑って返すと、遠くを見るような目で言った。
「大事な人・・・フレイが一番良い状態に戻る方法を、一番理解していて、そんな言葉を掛けてあげられる。・・・ナナミさんは優しいって、そう思わない?」
欲しい言葉。それは本人にだって分からないことが多いのに
その言葉を他人が捜し出せるなんて。
やさしいというか
嬉しいものだよね。
「・・・きみが、」
そう思うなら、きみにとっての優しさはそれなんだろ。
抑揚のない声でそう言うと、ルックは少し煩そうに目を細めた。
「泣かせて欲しいの?」
「え?」
ルックの言葉にエンジュはきょとんと目を丸くすると、一瞬後に吹き出した。
「あはは、違う違う。ぼくが泣かないもんだって知ってるだろ」
「・・・・・・」
泣かないのか、泣けないのか。
泣かないと決めているから、泣かないのか。
それとも
自分は泣けないものだと心が勘違いしているから 泣けないのか。
どちらにしろ
泣きたくないから泣いていない、そういうわけじゃないはずだけれど。
「・・・・・・これからどうするの」
風が吹き抜ける屋上で、ルックの声が響く。
戦争も幕を下ろしたその夜、同盟軍本拠地は宴を開いていた。
それは飲めや歌えやの大騒ぎで。
同盟軍の人間すべてが中庭に集まっているせいか、屋上はやけに静かだった。
「さぁ。旅に出るけど。行き先はとりあえず出発してから決める」
後ろから掛けられたルックの声に振り返り、エンジュが笑顔を浮かべる。
おそらく、フレイは今夜人知れず出発するだろう。
生きていた姉と、戻ってきた親友と共に。
今度は自分の幸せを追い求めることが、許されて。
「本当は、もっと早く発つつもりだったんだけど・・・フレイのことが気になって」
「・・・・・・・・・笑ってたよ」
楽しそうに、嬉しそうに
幸せそうに。
戦争に無関係のはずのエンジュが同盟軍に手を貸した理由はフレイを気にしてのこと、それだけだった。
自分と同じ星を持ち、同じように仲間に支えられ、期待を背負い、大事なものを失いながらそれでも進まなければならない。
同じはずだったのに、フレイは違う結果を手にした。
・・・同じはずだったのに。
一人悲しみを背負い、辛苦の念を飲み込み、それでも前に進まなければならない不幸な足を引きずって、呪って。
それなのに。
「フレイは・・・強いよ」
「・・・・・・・・・」
「何かを失くすたびに泣いてた。誰かの涙を見るたびに一緒に涙を流してた。・・・なのに・・・いつかは必ず、笑って前に進めるんだもん」
泣かないことは強さじゃない。
泣いてもまた笑える そんな強さのほうが尊いって、知っていた。ずっと前から知っていたんだ。
なのに、それでも泣けなかった。
一度流れ出してしまった涙を止める、そんな強さ自分にはないから。
一度開いてしまった不満の蛇口を止めることは、できそうにないから。
だから泣けなかった、泣かなかった。
せめて泣かない強さを保っていくしか できなかったから。
「フレイは・・・・・・強いよ」
もう一度ぽつりと、自分への皮肉のように呟くと、エンジュは壁に立て掛けていた棍を手に取った。
そんな様子を遠くを見るような目で追いながら、ルックが呟いた。その声が不安そうな響きを持っていたことに、自分でも驚いた。
「・・・フレイには・・・フレイ達にはこれから幸せが待ってるかもしれない。けど・・・」
そこまで言うと、口を噤む。
たぶん それは本人が一番よく知ってる。
自分に幸せが訪れるなんて
そんな
そんなことは・・・・・・
月明かりが雲間から差込み、エンジュの顔を一瞬だけ照らした。
ルックはエンジュの顔に笑顔が、今にも泣き出しそうな、そんな笑顔が浮かんでいるのを確認すると、拳をぎゅっと握り締めた。
足元を中心に風が集い始める。
ルックの師、レックナートの元へと主人を運ぶために。
「それじゃあね、ルック。運があればまた会おう」
「・・・・・・・・・・・・」
にこりと笑って小さく手を振るエンジュに、ルックは半眼で肩を竦めた。
「・・・ちょっと、こういうときって何か言うもんだよ」
「きみに言うことなんて何も」
「かわいくないな」
わざとらしく口を尖らせてみるが、ルックは反応もせず、口の中で呪文を呟き始めた。
「・・・・・・エンジュ」
「ん?」
彼の口から自分の名を呼ばれることなど、滅多にない。
内心驚きながら返事をすると、
「・・・これからも―――」
透き通った声が耳に届くのと、ルックの姿が緑の光に包まれて消えるのとが、同時だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
遠くで喧騒が聞こえる中、あたりは夜の闇に溶け込みそうなほどに静まり返って。
右手の力が抜け、棍がカラン、と音を響かせて転がった。
思わず両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込む。
「・・・・・・良かった」
泣いてない。
知っていた。泣いてもまた笑える そんな強さのほうが尊いと。
知っていたけれど
一度流れ出してしまった涙を止める、そんな強さ自分にはないから。
『きみは泣かないでよ』
優しい、言葉だった。
終
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