まだ、何も。
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「なあ、俺たちに何ができる? …どうしたら、いなくなった奴らに応えることができる?」
居なくなった者たちに。
殺されてしまった者たちに。
自分の代わりに死んだ者たちに。
報いるために。
詫びるために。
「俺たちができることは何だ? ――なあ、川田」
「お前、何もかんも俺に訊きスギ」
煙草を口から離すと川田は苦笑しながら、必死の表情で言い寄って来る七原の額を突付いた。
「お前に出来ることはお前にしか分からん。 答えは自分で見つけるもんや」
「…死んだ人間に何かしてやるんは、所詮は生きとるもんの気休めや。 死んだ人間を前に、ああしとけば良かった、こうしとけば良かった…―――そんなんは生きとる間にしてやれ言う話や」
「………せっかくお前が言ってくれたのにな。 俺、お前に言い残したことが山ほどあるよ」
……言ってない。
人殺し なんて言って
ごめん、って。
他にも、
ほかにも――――――
はらはらと、七原の目から雫が零れ落ちる。
「…っんで…何も聞かないままっ……」
陽光に照らされ、波に揺られる船の上で。
徐々に体温を失って行く川田の身体を抱きながら。
雨は止まない。
終
04/02/26