まだ、何も。













  +0.99+












「なあ、俺たちに何ができる? …どうしたら、いなくなった奴らに応えることができる?」

 居なくなった者たちに。
 殺されてしまった者たちに。
 自分の代わりに死んだ者たちに。



 報いるために。

 詫びるために。





「俺たちができることは何だ? ――なあ、川田」

「お前、何もかんも俺に訊きスギ」
 煙草を口から離すと川田は苦笑しながら、必死の表情で言い寄って来る七原の額を突付いた。



「お前に出来ることはお前にしか分からん。 答えは自分で見つけるもんや」




















「…死んだ人間に何かしてやるんは、所詮は生きとるもんの気休めや。 死んだ人間を前に、ああしとけば良かった、こうしとけば良かった…―――そんなんは生きとる間にしてやれ言う話や」











































「………せっかくお前が言ってくれたのにな。 俺、お前に言い残したことが山ほどあるよ」










 ……言ってない。























 人殺し なんて言って
 ごめん、って。






















 他にも、




 ほかにも――――――






























 はらはらと、七原の目から雫が零れ落ちる。







「…っんで…何も聞かないままっ……」








 陽光に照らされ、波に揺られる船の上で。
 徐々に体温を失って行く川田の身体を抱きながら。




















 雨は止まない。  





















   終











04/02/26




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