2.Never Ever




 信じるものを信じ続けることは容易くはないと思う。けれど僕がしてきたことといえば、信じられるものを信じると決めそれを信じていると言い続けることなので割りとそう難しいことではなかった。
 そこに在るかもしれない、無いかもしれない そんなものを信じることは難しいと言う者も多かった。 けれど僕にとっては信じられる絶対のものを、自己の中に築いた神殿に棲まわせていないことのほうが不安定だった。
 どんな苦痛を強いられようと、どんな理不尽の流れの中にあろうと、跪いて両手を合わせ、十字架に向かって祈りを捧げれば全てが癒える・そう信じられることはどれだけ幸せだろう。それは頑なに心を閉ざしてその瞳に神以外の何も映さないと誓う殉教者の想いに似ている。そして僕ならその殉教者である。
 痛みを、恐怖を、凌駕したならば人間はどう在れるだろう。幸せには。希望を、愛を謳うハイネには。 痛みを、恐怖を凌駕すれども、周りに在る人間達の痛みを、恐怖を凌駕させえない人間は、ただの無力な、言葉を持たない詩人だろうか。そして僕ならやはりただひたすらの殉教者である。
 僕が神と決めたもの以外は必要なかった。あとはこの僕の精神を邪魔する異形の悪魔を消し去る力だけ。そして僕は両手に銃を持った。
 目を閉じても光だけが溢れるように。この命を脅かされてもただひたすら微笑えるように。命に価値を見出さなければそれは案外簡単だった。僕は大抵いつも微笑っていた。理由がないから。理由などないから。

 そして僕は彼女に出会った。生まれた命を運んでいるのが運命なら、僕は彼女の元に運ばれたのだろうか。それとも彼女が僕の元に運ばれたのだろうか。そんな感慨がして、僕が信じていたモノを一瞬呪ってしまいたくなるような そんな出会いだった。





1<   top   >3