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 どうか云わないで
 でも暴かれるならあなたが良い







  + パンドラ +








「たくさんの、たくさんの人達を傷つけてきたけれど…僕が一番傷つけたのは、アイズだと思う」
「…だからここまで、逃げてきたんですか?」
「うん、もう帰らない」
「帰らないって、どこに?」
「アイズの所へ、さ」
「ずっと私の所にいる、ってことですか?」
「そうして欲しいなら、ね。 どう?」
「あなたがそうして欲しいなら、ですね。 どうですか?」
「………」
「あなたはアイズさんから逃げて来たんですか? 私の所へ、逃げて来たんですか?」
「同じじゃないの」
「後者なら、ほんとうの逃げですね」
「前者なら?」
「誰しもが持つ、ただの逃げ」
「何が違うの」
「私を選んで来たというなら…自分を責めてくれる人間を、探したということでしょう?」
「…………」
「大体、もう戻らないってどういうことですか」
「今は傷が深かったとしても。 傷は消えることが無くても。 会うこともなく時間が経てば、忘れることだって出来るだろうから」
「あなたのことを・ですか? あなたがつけた傷を・ですか?」
「どっちだって構わないよ」
「どちらにしろ勘違いじゃないですか」
「……」
「出来る・出来ないは置いておくとして…。 傷をつけた人間を忘れたとしても、傷が消えるわけじゃありませんからね」
「…」
「転んで出来た傷を、なぜ出来たのか忘れてしまった…そんな状態になるだけじゃないですか。 痛みはどうなんですかね」
「……」
「あなたの言葉で、あなたの行動で…ラザフォードさんに傷がついたということは、とても大切なことだと思いますが」
「……」
「あなたはそれを、忘れて欲しいと言うんですね」
「………」
「あなたがラザフォードさんを忘れたいだけじゃないですか」
「…………もう一回言ったら、赦さない、から」
「傷つきました? ふふ」
「…………」
「そんなカノンさんが好きですよ」
「…それは嫌いだという意味だ」
「そうでしょうか」
「僕はキミが嫌いだ……」
「それはとても好きだという意味ですね」











 終







掛け合いだけっていうのも好きですが、情景が伝わりにくいだろうなぁ…というのがね;
でもやっぱ私の中のカノひよは相変わらずこんな感じですね。どうしてラブラブ〜にならないんだろう(笑)