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 これが最小単位だった。








  + ふたり +








 一緒にいたいから居るのとは、ちょっと違っていた。

 寂しさを埋めるために一緒にいるのとも、ちょっと違っていたような気がする。





「一緒に行きたいって言わないんだ」
「そちらこそ 一緒に行こうって言わないんですね」
「言わないよ」
「………」











「素直じゃないね」
「そちらこそ」
「て ことは伝わってるってことか」
「………」











「僕から何を得た?」
「私から何を得ましたか?」
「僕は君に  何か残せた?」
「………」











「ひよのさん」
「なんですか」
「一回で良い」
「なんですか」
















「行かないで って  言ってよ」












「……」
「……」
「………」

「………イギリス でも おげん  き・で」


「……」



 静かな 目。

 心の中でどれだけ叫ぼうと
 喉を掻き毟ってまで言いたい 溢れ出る言葉も あるのに

 それでも



 何も言わない。

 相手の望む言葉など。









「……どうして ですか」
「…え」
「何を言っても行ってしまうのに どうして 言葉なんか求めるんですか」
「それ以外 キミに何を求められるの?」
「言えば 良かったじゃないですか   いっぱい、いっぱい…一緒に いたときにっ」
「一緒にいたから 求めるものなんて何もなかった」
「どうして私と一緒にいたんですか」
「分からない」
「…………」



 震える髪
 突き飛ばすように 引き寄せて。


「じゃあ キミはどんな言葉を求めたの」
「…、」
「ひよのさん、」






「必要として・欲しかっ たっ、」






「…そっか」

 たぶん 今までで一番 優しい顔で。



「キミにとって僕は必要だった?」


「………………」







 どうして必要だった。
 一緒にいる以外 言葉を交わす以外
 何がどうして必要だった。


 どうして一緒にいた。
 どうしてお互いという空気の中で微笑んでいられた。

 どうしてお互いという存在の間で安心して この不安定な大地で立っていられた。











「…みませっ、」
「ん?」
「すみません」








 答えられなくて。








「ごめんなさい」
「………僕も ごめんね」








 応えられなくて。



 こんな言葉しか あげられなくて。














 それじゃあ、と言って背中を向けると

 初めて  手を掴んできた「彼女」の手を
 初めて    振り払った



      セキベツ  の 日。

















 ただ好きだから一緒にいた なんて


 こんな単純で簡単な答え
 きっと一生信じられないし 気付くこともない。







 離した手から少しずつ冷めていく温度と
 突然あがたれたような 巨大な胸の穴


 その苦痛に顔を歪めても




 こびり付いた記憶が 涙でペンキのように剥がれ落ちて行くから





 永遠に   気付くことなんてない。














 きっとその日 僕らは   二個になった


















 終











こんなあからさまにラブいのを書いたのは初めて。
ひゃー恥ずかしい…ッ