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 簡単だった その構造のように








  + 砂糖菓子 +








 机の上に置かれた、主原料砂糖の熊なんだか耳が短い兎なんだかの形をしたモノ。

 皿を買ったおまけで付いて来たそれを彼女は楽しそうに眺めている。


 色すらも無い、ただグラニュー糖を圧縮して型にはめられたようなそれは、白くも銀の光に輝いて


 たかが砂糖に綺麗だ なんて思ってしまったことが憎い。






 近寄って、不思議そうに眺めている彼女の横から手を伸ばし、指先でそっと突付いてみると、いとも簡単に片耳が崩れ落ちた。

 あ、と彼女が小さく呟いたのが分かる。
 今度はもう少し力を込めて突つくと、頭ごと崩れ、それは熊なんだか兎なんだか全く関係ない胴体だけを残して砂糖の砂場を作った。


 皿に盛られた砂場は白くも銀の光に輝いて
 とても愉快な気分だった。



 それとは反対に彼女はぷうと頬を膨らませると、意地悪ですね、と怒ってもないような瞳で見上げてくる。

 僕は一層愉快な気分になり、滅多に上げない笑い声を喉から発し、
 そっと彼女の蜂蜜の色をした髪を撫でると、先ほどと同じ力加減で ぷうと膨れた白い頬を突付く。


 崩れ落ちはしなかったけれど


 崩れ落ちるのならば何度でも突付いてみただろう。
 嗜虐心?
 かも知れない。
 でも違う。

 だって愛しいから。

 いや きっとそうかも 知れない

 だって  愛しいから。





「綺麗だから崩したんですか?」

 彼女がそう問う

「たぶん…」

 そう答えた
 たぶん違うと思うけど








「脆いものを崩すのが 楽しいからですか?」

 彼女がそう問う

「違うんじゃないかな」

 そう答えた
 たぶんそうだと思うけど










 手を伸ばすと彼女は簡単に捕まり、胸の中に収まる。


 ちらと横に目をやると、胴体だけを残した砂糖菓子が 甘い砂にまみれて銀の光を放っているところで






 もう一度彼女の白い頬を突付くと
 無意識の内に思ったより込める力が強くなっていたのか
 彼女は少し眉を潜めた

 でも 逃げようとはしない



 それが楽しくて
 凄まじく良い気分で




 あの砂糖菓子なんかを綺麗だ なんて感じるほどに
 無意味で仕方ない小さな時間の感慨だろうけど












「私のことも崩したいと 思ってるんですか」



 そう無表情に問うた彼女にただ笑みだけを向け
 爪を立ててしまった頬に唇を寄せた




 流れた赤をすくうようにぺろとひと舐めすると 彼女はくすぐったそうに身をよじらせた




 それは想像通りなのか 想像に反してなのか とにかく鉄の味がして


 決して甘くはないのに 確かに甘いそれを夢中で貪る自分に


 いずれその砂糖に群がる蟻を重ねて





 脆く崩されるのはどちらの精神だろうと憂い





 少しだけ気分が悪くなった









 近い内に崩されるのは僕だろうに


 けれど 僕があの砂糖菓子だなんて



 あまりに 綺麗過ぎる表現





 けれど   確かに


















 終









暑苦しい…