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 "この世にあるどんな影も
 この光を苛んではならない"
 誰かそう啓示して







  + 罪 +








「人は生まれながらにして罪を背負う・って誰かが言ってたよ」
「ああ。私も聞いたことありますね」
「でもその存在そのものが罪だって言われた人間はいない」
「…『ボクタチ以外は。』って言いたげですね」
「…………」
 苦笑するひよのに、カノンは静かに窓の外に目を向けた。

 落陽。

 紅とオレンジと金の混ざった光がカーテンを突き抜けて、カノンの前髪を透かす。
 髪も、翠の瞳も、陽に焼けた肌も、その全てが染められて。
(神々しいとはこういうことなんでしょうね)
 一人考えて、ひよのは小さく微笑った。
 本人にそう告げる怒るだろう・と考えて、敢えて告げようかと悩んだが口を噤むことにする。

「人の生まれながらにして背負う罪とは何ですかね?」
「さあ」
「じゃあ質問を変えましょうか?」
「?」
「存在そのものが罪だという人間を、祝福することは罪ですか?」
「―――」
「そういう人を、愛することは 罪ですか?」


「―――――」


 無言、というよりは、
 言葉で容易く穢れてしまいそうな空間。

 落陽。
 金の光。
 紅に透ける柔らかな髪。
 やさしく笑む橙の瞳。
 その瞳に映る、『罪』の形。


「…そうだね」
 ポツリと零れたカノンの声に、ひよのが満足そうに目を細めて笑った。
(神々しいって、こういうのを言うのかな)
 相手と同じことを考えながらも口に出さず、その黄昏に染まる頬に手を延ばしながら
 ゆっくりとカノンの唇が弧を描いて。


「キミは、罪深いね」





 紡がれたのはきっと感謝の言葉。  











 終







最近書く文がどんどん取り留めなく長くなっていくので、短文練習。