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 微妙且つ絶妙の至近距離の遠いキミ。








  + 37.5 +








「大丈夫?」
「えぇ…」


 けほ、と咳と共にひよのがうめくと、ごろんと横向きになった。


「無理しないで学校休めば良かったのに」
 季節の変わり目で、気温が急に変わったことが原因か。
 珍しく(本人曰く) ひよのは風邪で早退。

「というかどうしてカノンさんまで早退なんですか…というかどうしてここにいるんですか」
「心外だなぁ。風邪のひよのさんを心配してお見舞いに来てるんじゃない」
「いりませんよ 帰ってください」
「…歩君が良かった?」
 くすり、と口の中で笑いながら言うと、珍しくひよのは 素直に眉を寄せて不快を顕わにして。

「どうして鳴海さんが出てくるんですか」
「言うまでもないでしょ」
「言ってみてくださいよ」
「好き なんでしょ」

 言って

 しまった  と思った。
 ひよのはふっと 少し苦しそうに笑って。


「今  平気で言えませんでしたね」



「…平気さ」
「どうして鳴海さんにやきもちなんですか」
「違う」
「違わないでしょう」
「違うって」

「カノンさん」
「ん」
「帰ってください」
「……」

「期待してしまう前に帰ってください」

「………?」
「あなただけここにいる理由。 さっきの反応。  期待してしまう前に…帰ってください」


「ひよの さん?」
「…」
「何、今の台詞……僕が期待してもいいのかな?」
「どうぞご勝手に。 熱に浮かされた病人が意味不明なことを口走ってるだけですよ」
 そう言ってひよのは、ぷいと壁側を向いて。
「大した熱じゃないよ キミ」
「……あーもう…帰ってくださいよ」
「期待すればいいじゃない」



 噛み合っていない会話。

 上がって行く熱。

 風邪以外の発生源。



「あなたのこと 嫌いでありたいんです」
「どうして」
「好きになったら 負けじゃないですか」
「大丈夫」
「何がですか」
「それなら僕がもう負けてる」
「…………………」








 彼女の顔が赤いのは
 彼女の希望により

 高熱による  発熱のためだと いうことになった。


















 終











ぐへ。(倒)
意地っぱりというかこんなひよのさん書いてみたかっただけ。ゲロ甘っ!
文というより小ネタ。
設定としてはブレチル全く無関係、ただのクラスメイトな二人。