綺麗じゃないなら、もっと深くまで。
+ 秘めごと +
「どうですか?調子は」
「キスもさせてくれないよ」
「へえ。ラザフォードさんらしいですね」
「そっちは?」
「キスもしてくれません」
「そっか。歩君らしいじゃないの」
「んで、どうして私たちいつも一緒にいるんでしょうねぇ」
「本当にね。 ひよのさんも最初はものすごく嫌がってたのにね」
「本当ですよ。 私はカノンさんのことが好きなんですかね?」
「分かりきったこと訊かないでよ。 そんなはずないだろ」
「ご名答」
「僕だってそうだよ。 キミには「好き」だとかそんな夢みたいな甘ーい感情は持ってない」
「じゃどうして私に手出すんですかね」
「嫌がってないじゃない」
「それが理由だとしたら、あなたものすごく嫌な男ですよ」
「あはは。 …強いて言うなら、」
「運命とでも言いたいんですか、お得意の」
「ご名答」
「くっだらない」
「さすが」
「お互い一番好きな人はいるんですよ?」
「何?自分に言い聞かせようとしてるの?」
「そんなんじゃありませんよ。 分かってますよ、もし「運命」なんてものがあるなら、それはこっちの方でしょうねって」
「ん。満足」
「…ま、ラザフォードさんや鳴海さんは純粋な方ですからね。きっとショックを受けますよ」
「全然好意なんて持ってない相手なんだから浮気にもなってないと思うけど」
「そうなんですよねー。難しいですね」
「滑稽だね」
「滑稽ですね」
「だからってキミと離れるのは嫌」
「………」
「だから二人にはバレないよーにすること提案」
「とりあえず賛成です」
「ダメだね〜僕ら」
「あなただけでしょ、イタい駄目人間は」
「うっわーヒド!そこまで言う?」
「だって好きじゃないですから」
「あはは。 その調子で一生僕を好きにならないでよ」
「どうぞご安心を」
「…………」
笑顔が。 すごくすごく愛おしいものだから。
これくらいがいい。
このくらいの距離が一番いい。
「よかった、キミがそういう娘で」
カノンはそう言って、少し前にいるひよのの手を引き寄せた。
終