IF...1:《tear》


《煌めきの都市》

一度は滅亡の道を歩んだ珠魅が、復活し、活気を取り戻した都市。
たった一人の、人間の犠牲と引き換えに・・・。

 

 

百年前にはなかった、小さな部屋。
それは、一人の英雄の『石像』を安置する部屋である。
その部屋に、今日も一人の客が訪れる。
瑠璃という名の、ラピスラズリの騎士だ。
彼は妹代わりの姫を連れず、一人で来た。
部屋の中には、誰もいない。
石畳を床が足音を反響させ、足音は、石像に近づいていく。
石像は、数段高い座の上で、前を見据えている。
まるで、瑠璃を歓迎するかの如く。
石像には感情が存在しないのに
そう思えるのは何故だろうか。

「久しぶりだな・・・」

瑠璃は、石像を見上げて言った。
石像は答えない。

「あれから、煌めきの都市は随分明るくなった。俺たちが初めて来た時とは比べ物にならないくらい」

瑠璃が、石像に近づく。
瑠璃の身長より頭一つ低い英雄の石像の頭に、手を置く。
冷たく、そして硬い。

「真珠も、ときどきパールになって、ここをまとめている。エメロードは、ジオの学校に再び行ってる。
その他のみんなも、新しい生活を楽しんでいるよ。
お前のお陰だ」

瑠璃は、英雄の肩に頭を埋める。

「なのに、なのに、何故かオレは満たされない。
望んでいた事は全て叶った。それなのに・・・」

瑠璃の目から涙が零れ落ちる。前までは決して流れなかった、涙が。
涙が瑠璃の頬を伝って、石像の肩を流れる。
石像はなんの反応も示さない。

「何かを成し遂げるには犠牲が必要だと、割り切っていたはずなのに。
お前が石になった瞬間、全てが崩れ去った感覚に襲われた。
なんで、どうして、お前はオレたちの為に命を投げ捨てた。
お前には、友も、弟子もいたのに―――・・・」

瑠璃が、英雄を抱きしめる。
英雄の、哀しい笑顔は変わらない。

「そうだ。たった一つ。叶えられなかった事があったんだ。
それは、もう二度と叶えられないけど―――・・・」

 

お前を。
生きているお前を。

この手で抱きたかった―――・・・

 

 

―――雨音が静かに旋律を奏でる―――

 

 

〜終わり〜







ああ〜素敵なSS!!!本当にありがとうございました!!!
瑠璃主〜〜!!!(興奮)もう、こんな切ない哀しい瑠璃主を戴けるなんて・・・(勝手に強奪してきた)生きてて良かったって感じです(笑)
本当に本当にありがとうございました〜(*>w<*)
これからも楽しみにしております!(ヲイ)

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